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レコード芸術誌「特選盤」、音楽現代誌「注目盤」

N.コシュキン:バッハによるプレリュード
D.スカルラッティ:ソナタ K.30「猫のフーガ」
D.スカルラッティ:ソナタ K.141「トッカータ」
A.ハチャトゥリアン:仮面舞踏会(全5曲)
F.サイ:リュキアの王女
J.ロドリーゴ:トナディーリャ
M.M.ポンセ:間奏曲 第1番
J.S.バッハ:われ汝に呼ばわる、主イエス・キリストよ BWV639
ALCD-7210 (ALM RECORDS) コジマ録音
録音データ:2016.7.12-14 三鷹市文化センター 風のホール
価格2,800円+税
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2人の奏者各個にそなわる技術と音楽性の高さ、お互いを知り尽くして長所を伸ばし合う合奏テクニックの周到さ、年季の入った洗練度と滋味において、まさしく世界的水準えお行く2重奏となれば、柴田健・福山敦子の夫婦デュオにまず指を折る。このアルバムでも2人は、既成の名曲に、秀抜な手腕により見事に成された古今の楽曲の編曲を加えて、どこを聴いても充実した楽興の時を生み出している。・・・・濱田滋郎
【レコード芸術誌「特選盤」】
ギターデュオは、ギターソロとは微妙に、しかしはっきりと異なった領域を歩める演奏手段であり、近年いちじるしくギターの演奏水準が上がった日本でも、これを目指す奏者たちが増えてきていることは喜ばしい。この手段をとれば、独奏では及び得なかったレパートリーが、およそ無尽蔵に開拓できるであろうを考えれば、なおさらである。だが、そのように賑やかになりつつある展望の中でも、もはや長年にわたってこの特別な分野に研鑽を積んできた「常設デュオ」の存在は、また格別の光彩を放つ。当ディスクにより、年季を入れた活動の歴史にまたひとつ重みを加える柴田健/福山敦子ギターデュオをその好例として。2016年録音のこの新譜において、すでに定評をもつこのデュオは、バロックから現代に至る、大変充実したプログラムを披露する。そこにはロドリーゴ、コシュキン、そしてトルコの鬼才ファジル・サイの手になるオリジナル・ギターデュオの逸品も含まれるが、それ以上に多くを占めるのは柴田健の筆になる編曲もので、J.S.バッハ、D.スカルラッティ、ポンセそしてハチャトゥリアンの諸作が、いづれもたいへん見事に、演奏家ならではの着眼点とセンスをもって“ギター化”されているのを聴く。中でも意欲作である(CDタイトルともなっている)ハチャトゥリアン《仮面舞踏会》組曲は、オーケストラ用原曲の機微を捉えながら無理なくギター曲としたもので、譜面が出たならば、斯界を益するものともなろう。 (濱田滋郎)
柴田・福山のデュオも長く続いているだけでなく、その演奏の質も絶えずみがかれて立派なものになってきた。柴田健の編曲の技がものを言うデュオだが、福山の美音もさらなる艶を聴かせるのが嬉しい。柴田の手になる編曲がここでは計5曲ということになるが、ハチャトゥリアンの《仮面舞踏会》は組曲であり、労作と言えよう。ギターという楽器でこの作曲家の音楽が聴ける例は他にあの〈剣の舞〉ぐらいしか思い出せないが、ここでも柴田の手腕とセンスは抜群で、5つの小舞曲が小気味よくまとまっている。古典のスカルラッティ、バッハらの作品も味わい深く、今回の近・現代曲の多いCD中にあってやはり貴重なレパートリーと言えよう。バッハの音楽を使ってもまったく別の世界に誘うのはコシュキンの《バッハによるプレリュード》で、さすがはギターに精通した人物の作品と思わせる。あのラフマニノフの手になるパロディをはるかに抜くウィットに富む愉快なものだ。他にギターデュオのためのオリジナルとしてファジル・サイの《リュキアの王女》とロドリーゴの《トナディーリャ》が収録されている。特に後者はかの「プレスティとラゴヤ」のために書かれた曲で難曲のひとつ。伝説のふたりの演奏ではhつらつたるラスゲアードを多彩に盛り込んでいたが、こちらの端整な美しさもいい。それは優しさともいえるがポンセの《間奏曲》にも香ものだ。 (濱田三彦)
【ぶらあぼ誌】
1988年に結成されたギターデュオの最新録音。まずは、演奏者柴田の編曲作品に、⒉台用のオリジナル曲をほどよく交えた選曲が光っている。そして何より30年近く二重奏を専門に活動してきただけあって、二人の呼吸感が素晴らしく、フレージングや抑揚の自然な揃い方など、急造デュオには不可能な域にある。スカルラッティはこの形態に合っていて魅力十分だし、ハチャトゥリアンはギターの新譜の如く髙鮮度。サイのエキゾティックかつしっとりとした情感、バッハのしみじみとした味わいも胸に染みる。ギターデュオの妙味を存分に満喫できる1枚。 (柴田克彦)
【音楽現代誌「注目盤」】
柴田健と福山敦子夫妻によるギターデュオの久しぶりの新盤は、コシュキン、サイ、ロドリーゴのオリジナル曲のほかに、柴田自身の編曲によるスカルラッティ、ハチャトゥリアン、ポンセ、バッハの作品を並べた多彩なプログラム。長年デュオ活動を続けてきた夫妻らしい息の合ったアンサンブルで各曲が演奏されているが、最大の特徴は落ち着いた穏やかな表情だろう。どの曲においてもほとんど激情を感じさせる荒々しさはなく、しっとりとした情感が曲を一段と魅力的なものにしている演奏が多い。反面、もう少し活力とか勢いが欲しいと思えるところもあるのだが、彼らの演奏の持ち味はそこにあると言うべきなのだろう。 (榎本健)
【CDジャーナル紙】
ベテラン夫妻デュオは、⒉台ギターが融合しなければ到達できない世界を聴かせてくれる。高い技術による濃密なアンサンブルが、深い味わいの音楽となって聴く者の心に届くのだ。バラエティに富んだ選曲と、ギターデュオの魅力を引き出す見事な編曲で、このジャンルの魅力がたっぷりと味わえる。 (堀江昭朗)
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